2023年 その他

個人的な視点賞(小林和人賞)

縄文の香り

草(大太藺)

28×15×22㎝(取っ手含む高さ:32㎝)

¥45,000

内藤 光彦(大太藺文化研究所)

ナイトウ テルヒコ

愛知県名古屋市

1986年
多摩美術大学絵画科 卒業
2021年
岐阜県立森林文化アカデミー入学、木工を学ぶ
在学中 岐阜県美濃市内に自生するオオフトイに出会う
課題研究の対象にオオフトイを選び栽培と素材としての研究を始める
2023年
オオフトイの栽培、活用、普及を目指し「大太藺文化研究所」を設立する

作品について

これは、草であると同時に籠である。乾燥を経たオオフトイの束の中から一本一本引き抜いて、その手触りや匂いなどを感じながら籠に編む。できる限りオオフトイの特性を生かし、草である姿を失わないように。その試行錯誤の中でたどり着いたのが、縄に綯うことであった。立ち現れた縄文はデザインとしてではなく籠になる必然の形である。初めて縄を綯った縄文の人はどんなに嬉しかったであろうと、自分の得た喜びから想像する。更なるリスペクトとして竪穴式住居を思わせる端処理をし、穂のチャームには籠を持ち歩く人がオオフトイの種と文化を蒔き広げる思いを込めて、このオオフトイは草のまま籠になった。

講評

「オオフトイ」という草に魅せられ、⾃ら栽培を始め、その研究と普及活動に取り組む作者による本作は、⽇本の⼯芸では馴染みの薄い素材を⽤いながらも、どこか伝統的な⺠具を思わせます。道具としての完成度を⾼めようとすると、素材の⽣の魅⼒は薄れていく「ものづくりのジレンマ」があるなか、草である姿、縄に綯った状態、編まれて籠となった形、という三態が共存するこの着地は、素材への敬意と愛情の賜物ではないでしょうか。

(小林和人)