2022年 その他
優秀賞
Vase floating on the lake
染色した結束バンド、ビニールチューブ
44.2×44.2×41.4㎝
¥400,000
國政 サトシ
クニマサ サトシ
秋田県藤里町
- 2012年
- 京都市立芸術大学修士課程工芸専攻染織 修了
- 2021年
- 「ARTST'S FAIR KYOTO 2021」(京都新聞ビル地下、京都)
- 2022年
- 「KAIKA AWARD TOKYO 2022」(KAIKA HOTEL、東京)
作品について
私は染めや編みといった染織の手法を使い、現代の素材に置き換えて作品を制作しています。普段見たことがある素材が一変し、全く違った素材へと変化します。具体的には、結束バンドをポリエステルを染める染料で圧力鍋を使って浸染します。そこで微妙なグラデーションを作ります。そして、結束バンドの「とめる」という機能を使って編み上げて立体にします。私が生まれた頃には身の回りに溢れるようにあり、自分が育ってきたうえで重要な素材にプラスチックがあります。プラスチックのニュートラルな不自然感に疑問を持ち、使い終わると捨てられ消費されていくコードをまとめ止めるなどの用途の結束バンドを素材として扱っています。大量生産され消耗される既製品は記憶に残りにくいです。しかし人の手に触れた瞬間そこに何らかの個性が現れます。意識していないと忘れ去られるちょっとした行為だからこそ、その小さなひとつひとつの「個」に化ける瞬間を留めたいと思うのです。今回の作品では湖に浮かぶ壺をイメージしています。湖に伝わる伝説(私が住む秋田県の田沢湖がある)、底面に映る水の色、また結束バンドを染めて編むといった行為が結びつき、一つの作品となればと考えて作りました。
講評
一次審査の写真選考の時点で眼を惹かれた作品が「Vase floating on the lake」でした。見た目のインパクトから近くで触ってみたいと思いました。また見た目だけでなくその制作プロセスも面白く、編み込みの素材にプラスチックチューブを使い、結束バンドを染色するなど昔から行われている手法を現代の素材に置き換え見事な作品に仕上がっています。独自の手法で作られる新しい形の次の展開がとても楽しみな作品です。
(寺山紀彦)