この半世紀、ここ富山の地で「ちんどん屋日本一」(最優秀賞)の座をかけたチンドンマンの熱い戦いが繰り広げられました。
これまでのコンクール(歴史)を振り返ると、まずは草創期、記念すべき第一回(昭和30年)の「ちんどん屋日本一」は東京「喜楽家喜楽」。
ユニークな人形ぶりで初めて見る観客をアッと驚かせました。それに続いたのが東京「柳家」(第4回5回)。熟練した太鼓の“バチ”捌きは、
東西を問わずひとつの模範になりました。第6回では、明るく元気な芸風の熊本「ひまわり宣伝社」が受賞。そのあと、第7回から第20回くらいまで、
名古屋「万宣社」が席巻する時代でした。芸もさることながら巧みな道具立て、時事ネタが、当時の観客に受けたようです。
その万宣社と時代を同じくして台頭してきたのが東京「常ちゃん」。なんと第21回から第24回まで、前人未踏の4連覇を成し遂げたのです。
衣装の早変わり、口上、舞踊など見事なひとつのスタイルをつくりました。
さて、このあたりから表舞台に現れてくるのが、東京「小鶴家」「みどりや」「二代目瀧乃家一二三」。
この3組は、以前にも幾度か上位に食い込んだことはありましたが、いよいよ脂が乗り切ってきたのでしょう。第25回から第35回までは、
まさにこの3組による三つ巴の様相で、僅差の混戦が繰り返されました。最優秀賞と優秀賞がほとんどこの3組で独占される状態が続き「御三家」と評されたほどです。
そして、第36回、大阪の新しいグループ「ちんどん通信社」が賞をとります。関西勢が受賞したのは第14回の神戸「福助宣伝社」以来で新奇な注目を集めました。
これを契機に東京「菊乃家」や「五朗八社中」など若手の組が、相次いで賞をとるようになりました。
第44回では、地元富山のパフォーマンス集団「作芸人磨心チーム」が受賞。そして、第46回では、なんと現役最長老「菊乃家」が返り咲き、
喝采を浴びました。第8回に受賞して以来、実に38年ぶりの快挙でした。
現在は、九州の若手勢の躍進もあり、かつての活況が戻りつつあります。ベテラン勢では、現役最長老「菊乃家」の復活にくわえ、
名跡「喜楽家」を受け継ぐ「アイデアチンドン」・「アスカチンドン」の2組も、近年なかなかの奮闘を見せています。
あの御三家「小鶴家」「みどりや」「瀧乃家一二三」もますます健在、「ちんどん屋日本一」の座を虎視眈々と狙っています。
新世紀も「ちんどん屋日本一」をかけたチンドンマンの熱い戦いが繰り広げられること間違いなしです。
(文中敬称略)