「商工とやま」H16年6月号
特集
富山の“食”をいただきます! “地産地消”で富山の食を再発見
BSE(狂牛病)によるアメリカ産牛肉の輸入禁止や鳥インフルエンザの発生など、社会を揺るがす食料問題が発生し、食の安全性確保に対する関心が高まっています。このような状況の中、地元でとれた食材を地元で消費するという「地産地消」が注目を集めています。今回は、富山県が推進する「地産地消」の取り組みや、各地域・市民グループが行っている活動をレポートしました。
■消費者の安全志向が高まる
私たちが日頃、何気なく食べている肉や魚、野菜。流通が高度化した今は全国各地、さらには海外からも多種多様な食材が集まり、スーパーなどの店頭に並んでいます。一年中、旬を気にせず好きな食材を購入できる便利さや、比較して安い品物を選ぶことができるメリットがありますが、その反面、残留農薬や最近はBSEや遺伝子組み換え、鳥インフルエンザといった食の安全性が危ぶまれる問題が多発。新鮮で安全・安心な食材を求める消費者の声が高まってきています。
こうした状況の中、地元でとれた食材を地元で消費する「地産地消(地場生産・地場消費の略)」がクローズアップされています。「地産地消」の良さには、地元の新鮮で安全・安心な食品が消費できること、生産者と消費者の結びつきが深まり信頼感が高まること、そして地元の食材の消費拡大にもつながることなどがあり、いわば食における「地域再発見」、「価値創造」運動でもあります。
■とやま地産地消推進会議
県では、県内でとれた新鮮で安全な食材を、県民に提供するとの観点から平成14年5月、生産者や消費者、流通関係者、学識経験者、栄養士など16名の有識者で構成する「とやま地産地消推進会議」を発足させました。
同会議は「地産地消」運動を展開し、安全で安心な食材の生産拡大、生産者の顔が見える流通販売による健全な食生活の実現、地域の食文化の伝承と創造、子どもたちへの食に関する教育の推進などを目指しています。
■3つの柱で地産地消を推進
とやま地産地消推進会議では、推進の柱を3つ掲げています。
(1)ホームページや情報誌を活用した情報提供などにより、多彩な食材と富山ならではの食文化の魅力をアピール。
(2)地場産品の直売所やスーパーの地場産品コーナーの設置などによって、生産者の顔の見える地場食材の流通販売を促進。
(3)健全な食生活を推進するため、研修会などによる食生活指針の普及啓発に努めるとともに、学校給食への地場産食材の導入などを促進。
以上の柱をもとに、県や市民グループでは具体的な取り組みを展開しています。ご紹介しましょう。
■認証マークは県内産の目印
まず(1)の富山の食をアピールする情報提供として、県では「ふるさと認証食品制度」を設けました。これは地域の原材料の良さを生かし、地域の食文化や技術にこだわりをもって作られた特産品(富山の価値資源)をふるさと認証食品として認証するもの。現在、17品目が認証され、認証商品には認証マーク(Eマーク)がつけられています。
消費者にとっては店頭での購入の際、優れた品質の商品を選ぶ目安になり、また、生産者にとっては自分たちが生産・加工した商品に対する評価になり、販路拡大に役立てることもできます。
■食の伝承人を認定
また、県では、各地域で郷土料理の伝承活動を行っている人を「食の伝承人」として認定し、富山の食文化の伝承活動とアピールをバックアップしています。認定は平成11年度から各地区ごとに始まり、15年度までに62名の料理研究家や主婦の方が選出されています。
食の伝承人は毎年秋に開催されているイベント「食祭とやま」の会場をはじめ、各種講習会や学校の授業にも出張して郷土料理の実演、調理指導などを行っています。また、平成15年度から、富山の優れた特産物の生産・加工等に関する優れた技能等を有する個人または団体を「特産の匠」として認定しています(平成15年度6個人・2団体)。
■朝市・夕市は市内12ヵ所で開催
続いて(2)の地場食材の流通販売促進について。これには生産者が店舗の地場産品コーナーに野菜などを持ち込んで委託販売してもらうインショップ形式と、生産者がお客さんと対面して販売する直売形式があります。インショップ形式は最近、JAのスーパーやアルビスなどが導入しています。店頭で、生産者の名前の入った商品を見かけたことがある人も多いでしょう。
一方、直売形式の朝市や夕市も人気を集めています。富山市内では現在8グループが市内12ヵ所で朝市・夕市を開催しています。(お問い合わせ先・富山市役所農政振興課 TEL076-443-2080)
その中の一つ、富山市池多地区の「池多食と農を考える女性の会」では、毎年5月上旬から12月上旬の日曜(7〜8月は水曜も)、とやま古洞の森駐車場で朝、収穫したばかりの野菜や加工品を販売しています。同会の活動は地元の農作物を見直そうと平成9年、地元農家の女性たちが集まってスタート。朝市の開催だけでなく郷土料理の伝承などにも積極的に取り組み、昨年、県の農村文化賞を受賞しています。
「朝市は8年間続けてきましたが最近は開店前に長い行列がつくほど。お客さんの食に対する関心の高さを実感しています。お客さんの声を直接聞くことは活動の励みにもなりますね」(代表の栗山美知子さん)。
■通年型の直売店もオープン
こうした朝市・夕市の人気を受け、年間を通して直売するスポットも市街地に誕生しました。
さる3月21日、富山市などが出資する第3セクター「(株)まちづくりとやま」が中央通りに開設した「街なかサロン 樹の子」では、女性農業者たちのグループ「とやま地産・味こだわりの会」が毎日、新鮮な野菜や果物、漬け物、お菓子などを販売しています。
「商店街なので買物のついでに立ち寄ってもらえるのがうれしいです。自分で作ったものは自信をもって味の説明ができます。素朴な味に親しんでほしいですね」と会員の古井シズエさん。
このほかには富山市田尻にある「なのはな農協」が5月22日、敷地内に農産物の直売所を開店します(10〜18時・火曜定休)。こちらも常設なので、いつでも気軽に訪れることができます。
■子どもにも地場食材のおいしさを
最近は食生活が豊かになった反面、栄養のバランスの崩れによる生活習慣病が増大しています。これは次代を担う子どもたちにもあてはまり、学校給食の場で、地域の食材を生かし、栄養バランスのとれた正しい食文化を伝えていくことが求められています。
(3)の取組みの一つである学校給食への地場食材の導入は、各市町村単位で推進され、富山市では平成15年2月、市内の生産組合や流通業者、学校給食会などの関係者26名で「富山地場農産物の学校給食への消費拡大連絡協議会」を発足。生産者と学校給食が連携をとりあっていくことの重要性を認識し、積極的に地場農産物を導入していくことを始めました。
■多少手間がかかっても増やしていく
「富山市の場合、1日約28,000食と供給量が多いので調整が大変なのですが、できる限り地場の野菜を納品し、調理してもらうようにしています。かぶ、大根、白菜、キャベツなどは昨年から学校給食のために生産量を増やすよう生産者に依頼しています。昨年12月までの中間集計では、取り扱い品目が13品目から16品目へ、消費量も33トンから51トンに増えました」(富山市農林水産部参事 木下眞さん)。
同協議会では、これからもコストの調整や量の確保に取り組みながら、生産者と流通、給食センターが一体となって取り組んでいくということです。
豊富な海の幸、山の幸に恵まれた富山。こうした豊かな食材(価値資源)に感謝し、できるだけ地元のものをおいしく、安心していただく「地産地消」は、理想的かつ、健康的な食のスタイルです。今後、県民一人ひとりが意識的に取り組んでいくことで、毎日の食卓や飲食店、学校給食など様々な食のシーンに地場の食材が浸透していくことを期待したいと思います。
◆「いただきます!富山」の応援団を募集
富山県農林水産企画課では「地産地消」の気運を盛り上げ、県民総参加の運動として展開していくサポーターを募集しています。
(応募資格)
県内に住む、あるいは勤務・通学している18歳以上で食や農林水産業に興味のある方なら誰でも。食に関する企業や団体もOKです。入会金は無料。登録された方には団員証を送付します。
(特典)
・県産の食材に関する早耳情報を提供
・朝市夕市などの直売情報の提供
・イベント・講習会・試食会の案内
(お申し込み先)
〒930-8501富山県農林水産部農林水産企画課企画班
TEL076-444-3368/FAX076-444-4407
メールアドレスnourinsuisan5@pref.toyama.lg.jp
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◆「ふるさと認証食品」の認証を受けよう!
消費者の本物志向、安全志向が高まる中、自社食品の信頼・評価を高めるため、貴社(団体・グループ)が生産する食品に「富山県ふるさと認証食品」のブランド・マーク(認証マーク)を付けて見ませんか。
認証申請することができるのは、次の3つの基準に適合した食品で、富山県から認証された場合は、食品に認証マーク(Eマーク)を付けることができます。
これにより、貴社の商品(価値資源)を『富山ブランド』として全国に発信することもできます。
3つの基準
(1)主要原材料が富山県産100%であること
(2)生産された工場などが県内にあること
(3)食品としての品質が優れていること
現在、97社、17品目(167アイテム)が認定を受けています。※平成15年12月末現在
(お問い合わせ先)
富山県農林水産部食料政策課
TEL076-444-3271
この認証マークは
優れた品質 Excellent Quality
正確な表示 Exact Expression
地域の環境と調和
Harmony with Ecologyの3つのEを『品』の形に配置し、『良い品(イイシナ)』であることを表わしています。
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■ふるさと認証食品(17品目)
ホタルイカのしょうゆ漬け | かんもち | 米菓 | 焼豚 | 漬物 | ポークソーセージ |
ホタルイカの塩辛 | ブリ大根 | 生もち | 食用なたね油 | ロースハム |
シロエビの昆布じめ | 豆腐 | 米みそ | かぶら寿し | 干柿 | 油揚げ |
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