「商工とやま」平成16年11月号

特集
自分磨きに、ビジネスに楽しく便利な図書館を活用しよう!


 富山県は全国で唯一、すべての市町村に公立図書館が整備されている県で、県民一人あたりの公立図書館数、蔵書冊数も全国1位という充実した環境を誇っています。しかし図書の貸出数では全国平均が1人年間4・5冊強であるのに対し、富山県は平均3・8冊。恵まれた設備環境の割には十分に活用されていないようです。最近の図書館は本の貸出以外にもデジタルデータの提供やビジネス相談、講演会など時代のニーズに応じた多様なサービスを行っています。今回は富山市内の図書館施設をレポート。それぞれの特徴を知って、もっと賢く楽しく利用しましょう。



◆ 図書館サービス最前線

 図書館は私たちの知的好奇心を満たしてくれる場として、また調査や研究をサポートしてくれる専門機関として親しまれてきました。しかし近年は図書や資料の貸出に限らず、IT環境に対応したデータ情報の提供やビジネス支援といった新しいサービスも増えてきています。
 以下、図書館サービスの最前線を紹介したいと思います。



◆ デジタル技術により古書や資料が鮮明に

 まずはデータ情報サービスについて。富山県立図書館では、平成11年に別館を増設し、電子情報サービスを拡充させました。情報プラザでは古絵図や写本など郷土資料のデジタル画像を提供しています。例えば大きな立山曼荼羅の貴重な歴史資料も画面上でズームアップして詳細を見ることができます。



◆ IT技術で効率化、調べ物がより簡単に

 同じ端末でCD-ROMやオンラインで様々なデータベースにアクセスして、判例や新聞雑誌記事、人物情報など調べ物をスピーディにこなせます。また、国際プラザでは環日本海諸国と図書の交換を行っており、現地の情報を入手することができます。

 県立図書館のホームページからは、所蔵図書や雑誌の検索の他、古絵図・貴重書の画像、さらに富山県に関する新聞雑誌記事の検索もできるので、一度ご覧になってください。

 「情報のデジタル化は貴重な歴史資料の劣化防止に役立ちますし、利用者への効率的な情報提供にも貢献できますので、今後も所蔵品のデータ化を進めていきたいと思っています。また当館は県内の図書館ネットワークの中核施設の機能も担っていますので、様々な情報を集約し、地域格差のないサービスを提供していきたいと思っています」(富山県立図書館 京谷しげ子普及課長)。



◆ インターネットから貸出予約も

 一方、富山市立図書館では、県立図書館よりも身近で市民に根ざしたデータ情報の提供に取り組んでいます。例えば地元売薬産業によって発展した商業デザインやパッケージデザインの歴史を体系的に整理して公開するなど、目で見て楽める情報提供にも取り組んでいます。ホームページからも図書の検索、貸出予約ができ、受け取り館の指定等もできます。

 また昨年12月に開設したCiCビルの図書コーナーとの連携も強化。本館とオンラインで結ばれているので自宅でネット予約した図書はCiCで受け取ることができます。ここなら夜9時まで開館していますので、会社帰りでも立ち寄ることができます。



◆ ビジネスユースに活用したい

 欧米などでは以前から、公立図書館が商売のマーケットリサーチや企業経営の支援に活用されているそうですが、こうした取り組みは近年、日本でも導入され始め、図書館がもつ膨大な情報量を生かし、ビジネスを支援する図書館が増えてきています。

 富山市立図書館では昨年春、4階一般閲覧室にビジネス関連資料を収集した「お仕事お役立ちコーナー」を新設。図書館資料のほか商工会議所の資料も収集し、パソコンによる情報提供も開始しました。また、昨年12月には駅前CiCビルの「とやま市民交流館」に図書サービスコーナーを開設。こちらにはビジネス関係図書3000冊のストックのほか、インターネット・電子図書閲覧端末を10台設置し、ビジネス情報サービスを強化させました。

 「館内で十分に整備できなかったネットサービスをCiCビルの図書コーナーで拡充し、駅を利用するビジネスマンなど多くの方々に利用していただけるようになりました。資料やシステムは整備できましたが、個別相談に対応できる専門スタッフが足りないのが現状。今後は専門スタッフの人材育成をはじめ、商工会議所など関連機関からの協力も要請していきたいと思っています」(富山市立図書館 亀澤祐一館長代理)。



◆ 図書館がビジネスセミナーを開催

 また市立図書館では9月から、民間企業のファイナンシャルプランナーを講師に迎えた初の経済講座「私たちの暮らしとお金を考える」を開講しました。これまで図書館の講演といえば文化や芸術分野のものが中心でしたが「お金の運用は市民の生活に重要な知識」と捉え、企画運営していくことになったそうです。公立図書館と民間企業とタイアップはこれまでなかったことですが、ビジネスの現場の声を知るには必要なこと。図書館では必要に応じながら、今後も他の専門機関との連携を図っていくということです。



◆ 豊富なビデオライブラリー、社員研修に好評


 富山県新世紀産業機構の情報サービス課ライブラリーでは、公立図書館との差別化を図り、ビジネス関連に特化した情報提供を行っています。

 自由に閲覧できる本棚にはビジネス本や経済白書、年鑑、企業データ本などがずらり。1冊10万円以上する専門書や企業年鑑など、独自に購入できない高価な資料も閲覧することができます。またここではビジネス関連のビデオを2000本以上ストックしています。内容は社員教育に関するものや経営に関する講演会の収録ビデオ、ISO認証取得のハウツーもの、パソコン技術習得のガイドものなど多種多様。企業経営者が自社の社員教育に使用するケースが多く、勉強会の日程にあわせて予約する利用者も多いそうです。 

 このほかには県内新聞の経済・産業関連記事、人材情報、図書・雑誌情報をデータベース化して情報提供しており、ホームページからアクセスして入手することもできます。また会員になってIDを取得すれば帝国データバンクや東京商工リサーチなどのデータも受けられます。

 「貸出はすべて無料です。ビデオは幅広い業界、内容を網羅していますから企業経営や人材育成などに活用してほしいですね。こうしたサービスはまだご存じでない方が多いので、今後もっとアピールしていきたいと思っています」(富山県新世紀産業機構 太田真由美情報サービス課副主幹)。

 一度しか見ないビデオや一部だけ知りたい情報などは、こうした専門機関で借りたほうが得。ここでは情報収集に関する質問にも応じてくれるので、気軽に相談したいものです。



◆ 街の情報データベースとして

 「今は個人が必要な情報を収集し、自己判断、自己処理していく時代。図書館はそういう個別のニーズに、より柔軟にスピーディに対応していくことが求められます。それには公立・民間の枠を越えて専門機関や企業と連携を図りながら、サービスの向上に取り組んでいきたいと思います」(富山市立図書館 亀澤祐一館長代理)。

 この数年、インターネットの普及によって、欲しい情報が自宅で簡単に入手できる便利な世の中になりましたが、図書館も社会の動きや人々のニーズに応じた進化を遂げています。図書館はもはや学生や本好きの人たちだけの場所ではなくなっています。もしかすると、新しい事業のアイディアやビジネスチャンスは図書館にあるのかもしれません。

 私たちも仕事の合間に昼休みに、もっと気軽に足を運んでみたいと思います。


■富山市内にある図書館施設の特徴やサービスについてご紹介します。最近はビジネス向けの情報提供が充実。目的や用途に応じて賢く使い分けましょう。


◆富山県立図書館
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■調査研究のための図書館
 専門性の高い図書や学術書を多く揃え、図書の貸出のほか、資料や情報の提供、書誌の作成、文献の複写サービスなどを行っています。館内にOPAC端末を設置し、タッチパネルでは漢字からの検索ならびに富山県関係新聞・雑誌の見出し検索ができるようになっています。

■図書館のための図書館
 県内各市町村の図書館との連携を図り、相互貸借を行っています。例えば読みたい本が近隣の図書館にない場合、県立図書館が仲介役となって連絡車を出し、所蔵している図書館から配送するサービスを行っています。連絡車は県内を定期的に巡回しており、予約から約1週間程度で近隣の図書館に届くというしくみです。このほか県外の主要図書館とのネットワークも図り、情報交換を行っています。

■保存のための図書館
 貴重な郷土資料や新聞、雑誌などを収集・整理し、そのデジタル保存にも取り組んでいます。

※平成11年7月に開設した別館には、図書の貸出以外の様々なサービスを提供しています。

○情報プラザ
 多面的な検索機能をもち、大データ容量を有するCD-ROMなどの電子出版物を収集すると共に、当館が所蔵する貴重な古文書・絵図・写本・版画・掛け軸などをデジタル画像で提供しています。またインターネット経由で読売新聞の全文検索「ヨミダス文書館」や作家執筆者ファイル、医学中央雑誌などの外部のオンラインデータサービスも利用できます。電子化所蔵資料は1,131点(41,429画像)あります。

○国際プラザ
 環日本海諸国(中国・韓国・ロシア)を中心とする本や資料を収集・整理し、国際情報を提供しています。図書は約4000冊、雑誌は29誌、新聞6紙を収集。このほか在日外国大使館発行のパンフレットの閲覧や英語・中国語・韓国語の翻訳ソフトの利用(無料)もできます。

○サークルプラザ
 大型活字本や拡大読書機を導入し、ノーマライゼーション社会に対応しています。AVブースではカセットブックやビデオ資料が視聴できます。(大型活字本80冊、雑誌17誌、点字図書24冊、ビデオ277本、カセット42タイトル、CD147枚、DVD8枚など)

○特設文庫
 雪の図書・水文化資料、地元に関係した図書を揃えた県人文庫、洗足学園からの寄贈図書を集めた洗足学園富山文庫などがあります。

○新聞閲覧室
 新聞の閲覧を目的とした専用スペースです。過去の新聞(明治18年から収集)はマイクロフィルム、縮刷版での検索が可能です。

○子どもの部屋
 絵本や児童書を中心としたスペースです。




◆富山市立図書館
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■貸出サービス
 市民に根づいた図書館として一般図書、児童書を中心に幅広いジャンルの図書を所蔵しています。中央館のほかに市内に15ヶ所の分館があり、図書館から遠い方のために3台の自動車文庫が150カ所余りの駐車地を巡回しています。寄贈コレクションには山田孝雄文庫(国文学者)、翁久允文庫(日本を代表するジャーナリスト)などがあります。

■児童サービスの拡充〉
 平成13年12月「子どもの読書活動の推進に関する法律」が制定され、子どもの読書活動に向けた取り組みが重視されるようになりましたが、富山市立図書館では開館当初から児童サービスの拡充に取り組んでおり、「子ども読書の日」のイベントや「子どもの本のリサイクル広場」、「読み聞かせボランティア養成講座」、「学級招待」など様々な事業を行っています。

■レファレンス機能の充実〉
 調査研究に対するサービスの充実に取り組んでいます。来館者の素朴な質問から専門的な知識を要する調査まで、幅広いジャンルの要望に対し、データの収集や事実関係の確認、参考図書の提示などを行っています。大学生の論文作成のサポートやビジネスマン、商店主から依頼された調査研究にも対応しています。また、インターネット端末を開設し、デジタルデータによる情報も提供。これらの中にはホームページからアクセスできるサービスもあります。

※とやま市民交流館図書サービスコーナー
 富山駅前(CiCビル3階) 076-444-0644
 開館 10時〜21時、第3火曜休館
 富山市立図書館中央館の機能を補充し、ビジネス支援や地域活性化サービスを提供することを目的に昨年12月、CiCビル3階にオープンしました。
 夜9時まで開館しているので会社帰りや待ち合わせ時間などに気軽に利用することができます。

○ビジネス支援サービス
 インターネット端末8台を使って「日経テレコン21(商用データサービス)」や電子図書などが利用できます。またビジネス関連図書約3000冊、関連新聞などを所蔵。本館からの資料も取り寄せられます。

○児童サービス
 インターネット端末2台により子ども向けの電子図書にアクセスできます。絵本や紙芝居など3000冊をストックしています。

○図書館窓口サービス
 インターネットで予約した図書(本館・分館を含む)をここで受け取ることができます。





◆財団法人富山県新世紀産業機構 情報サービス課 ライブラリー
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 企業の技術、経営、情報について多角的にサポートする総合支援機関として平成13年春に発足した富山県新世紀産業機構の情報サービス事業として、図書・ビデオを所蔵したライブラリーを開設しています。

■図書・ビデオソフトによる情報提供
 産業、経済、経営を中心とした図書・雑誌・ビデオソフトを揃え、自由に取り出して閲覧できます。これらは一部を除き無料での貸出サービスを行っています。

■データベースによる情報提供
 新聞記事、人材情報、ビデオソフト情報、図書・雑誌情報などをネット上で情報提供しています。新聞記事は事前に利用登録が必要です。またエリアマーケティング情報として商圏情報を提供(有料)しています。

■セミナー・講習会の開催
 全国各地から講師を招き、経営やインターネット活用に関するセミナーや講習会、パソコン講座などを開催しています。

■会員へのサービス
 会員制度を設け(年会費は中小企業25,000円、大企業50,000円)、会員には機関誌の送付、企業データサービスの検索サービス、パソコン講座の無料受講、図書・ビデオ貸出の郵送などのサービスを行っています。
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