「商工とやま」平成17年12月号

呉羽丘陵を語る  その4 呉羽丘陵に集う人たち

 さまざま人たちが、さまざまな思いで呉羽丘陵にやってくる。
 立山連峰を眺める人。写真を撮る人。お茶を飲みにくる人。施設見学にくる人。ドライブを楽しむ人。散歩やジョギングをする人……。
 とても書ききれるものではない。
 その中で、最近、新しい人の動きが生まれてきている。今回はそのことを紹介しよう。


■呉羽丘陵の課題

 前回、前々回と呉羽丘陵の歴史や施設を紹介した。紹介というくらいだから、内容はいずれもいい話ばかり、である。

 でも呉羽丘陵は大きな課題を抱えている。この丘陵の大半は都市公園に指定されているが、もともとは地域の人々の生産の場であり、生活の場だった。今で言う里山であった。柿渋やお茶が作られ、杉が植えられ、日々の薪集めや柴刈りの場だった。尾根筋には赤松が生え、マツタケをはじめ多くのきのこが取れたという。

 働く場ではなくなり、放置された呉羽丘陵では、猛烈な勢いで孟宗竹林が広がった。地下茎を伸ばしてそこから生ずる筍は、あっという間に棹を伸ばして十数メートルの背丈となる。それより低い草や木は枯れ、雑木林は竹林に置き換わった。

 時の流れでお茶づくりが衰退し、替わりに西山麓を中心に梨づくりが広がった。呉羽の梨は一大ブランドとなった。その梨づくりも後継者対策が大きな課題と言われている。丘陵の春を彩る一面の梨の花。その白い絨毯もところどころ虫食い状態が目立つ。後継者がなく、虫害対策のため梨の木が抜かれた跡だ。

 昔は学校の遠足で、多くの子供たちも訪れた呉羽丘陵。あのときの賑わいは今はない。



■丘陵の活用を考え実行する人々

 こうした呉羽丘陵の課題に対し、財政難の時代の中でも実行できるアイデアはないかと、富山市公園緑地課は、昨年の秋、市民によるワーキンググループの参加者を公募し提案を求めた。
 集まった市民は24人。農業、林業、園芸、教育、芸術、メディア、建築、ボランティア…。職業、専門分野も多種多彩。

 梨畑の跡地利用を検討する「梨班」、竹林問題を考える「竹班」、呉羽丘陵の森も人も元気になるには、を考える「森の楽校」班の三班に分かれて会議や勉強会を積み重ねてきた。

 市民による竹切りイベントや、竹のクラフトや楽器づくり、アート、市民農園の活用など、さまざまな提案がされた。再生にはイベントだけでなく、森作りのための人が住むのが一番という意見もあった。
 実際に関わってみようと、ワーキンググループ委員は、梨の手入れ、竹の除伐、筍掘りなどを体験し、梨畑跡地にサツマイモを植え、丘陵の遊歩道を調べた。
 そのうち各班の思いは、「森の保全と活用のための人材づくり」で一致し、「呉羽丘陵 森の楽校」として一つになって動くことになった。ワーキンググループは四〜五十人の市民が関わる動きとなった。

 当面は、森で楽しむ企画を起こし、気づきや楽しみ、仲間を増やす。将来をイメージしながら活動やルールを発展させる。数年後には目に見えるフィールドを実現する。それを拡大して数十年後に理想の森を実現していくことなどが語られ始めた。
 呉羽丘陵を変えようという思いと動きが芽生え始めた。人々が丘陵で動きだしたのだ。

 こうした中、昨年のクマ問題から中山間地の里山再生が社会的問題となり、富山市ではそのための「きんたろう倶楽部(※)」も生まれようとしている。
 「森の楽校」と合い通じる精神がそこにも流れている。

 山に入れば見えなかったものも見えてくる。無関心だった山々に、もっと都市に住む人々の関心が注がれていくことを望みたい。

(※)きんたろう倶楽部:森と里山を再生しクマとの共存を目指す市民参加のボランティア組織

■お問い合わせ先 (財)富山市ファミリーパーク公社 TEL 076-434-1234

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