当所の中小企業支援ネットワーク強化事業では、中小企業の皆さまの様々なご相談に応じ、専門家を派遣するなどして問題解決のお手伝いをしています。
今回はこの制度を活用して、初めて自社単独で展示会に出展された有限会社桂樹舎代表取締役の吉田泰樹さんにお話を伺いました。
越中和紙の歴史
国の伝統的工芸品に選ばれている越中和紙。八尾町の八尾和紙、旧平村の五箇山和紙、そして朝日町の蛭谷和紙の3つを総称して越中和紙と呼ばれています。
その歴史は古く、奈良時代に書かれた「正倉院文書」等の古文書には越中国紙について記されており、平安時代に書かれた「延喜式」にも、税として納める作物として和紙が記されているそうです。
越中和紙は強靭なコウゾ紙が特徴で、障子紙や提灯紙などに多く使われていました。江戸時代になり売薬業が盛んになると八尾和紙は薬の袋や懸場帳などに用いられます。また、平村の和紙は加賀藩で使用する紙として盛んに生産され、今日に受け継がれています。
民藝と型染め和紙との出会い
八尾和紙を製造・加工販売する桂樹舎は、現在の吉田泰樹社長の父の吉田桂介さんが戦後に創業した越中紙社がはじまりです。吉田社長は同社の歴史について次のように語ります。
「もともと八尾の山間部で作られていた伝統的な手漉き和紙ですが、時代とともに需要が減り作り手も少なくなっていきました。和紙づくりの技術の向上や品質の改善などの目的で、戦前、八尾に製紙指導所が作られました。東京の呉服店で働いていた10代後半の父が体調を崩し八尾に帰ってきていたのですが、病気も直り、その製紙指導所で和紙づくりを学ぶようになったのです。そこで、手漉き和紙のすばらしさに魅せられ、やがて和紙の世界へ。
民藝運動の柳宗悦氏や染色文化研究家の上村六郎氏との出会い、そして染色工芸家の芹沢介氏に師事するなかで色紙や型染め和紙をつくるようになりました。現在も当社で毎年作っている型染め和紙のカレンダーは、まさにその出発点ですね」
吉田社長も大学卒業後は芹沢介氏の工房で型染めの技術を3年間学びました。和紙製造の越中紙社と、昭和35年に設立された加工・販売の桂樹舎の2社体勢で営まれていましたが、平成15年に桂樹舎に運営を一本化し、現在に至ります。
多彩な和紙加工品を製造販売
同社の紙の特徴は、植物染料や化学染料を使った様々な色紙と多彩な模様が可能な型染めの和紙であること。八尾和紙の丈夫さと色や柄の豊富さなどを生かし、カレンダー以外にも、バッグや名刺入れ、ペン立て、座布団、クッションなど、さまざまな商品を生み出してきました。
「自社内で型染め和紙の製造から加工まで行っているところは国内でもほかにないのでは」と話す吉田社長。伝統的な手漉き和紙や独自の型染めの技法を生かしながら、時代に合った商品開発をすすめようと、同社では現在、数組の若手デザイナーらとコラボし、様々な新アイテムを開発しています。
国際文具・紙製品展に出展
この7月に東京ビックサイトで開催された国際文具・紙製品展「ISOT2012」は、文具・紙製品・オフィス用品のアジア最大級の展示会で、国内外の文具、オフィス用品の有力バイヤーと商談を行うことが可能です。今回、同社は初出展にあたり、当所に相談され、中小企業支援ネットワーク強化事業の専門家を派遣することになりました。
「これまで、ギフトショーには国の伝統工芸品として富山県の他の産地といっしょに出展してきましたが、単独での出展は今回初めてでした。出展にあたっての細かなポイントやアンケートの作成と回収など、展示会前後で、専門家の方のきめ細かなフォローをいただけたことはとてもよかったですね。また、展示会期間中も来場者へのアンケートのお願いなど、担当の方がとても熱心に動いて下さいました。アンケートを書いていただいた方には和紙のしおりをプレゼントすることなども具体的にアドバイスいただき、これも来場の方にとても喜んでいただてよかったと思います」
新規顧客を獲得
吉田社長は、各ショップのバイヤーなどの来場者と名刺交換やアンケートを通して交流し、同社の特徴や商品をアピール。展示会後、首都圏の大手販売店などをはじめ、8件との新規取引に成功しました。
「期間中は、お客様とお話していても、みなさんに興味を持っていただき、とても手応えを感じて楽しかったですね。民藝の世界はいま見直されつつありますが、それだけではこれからは生き残っていくことはできません。
すべてをがらりと変えるわけではありませんが、外からの新しい意見や考え、そしてデザインを受け入れながら今後も様々な試みを継続してやっていきたいと考えています」
●有限会社桂樹舎
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