富山市と富山商工会議所が主催し、創業まもない、革新性と独自性の高い優れた企業を表彰する富山市ヤングカンパニー大賞。今回は、平成24年度の大賞に選ばれた株式会社データブロード代表取締役社長の松原良樹さんと取締役副社長の伊ざ智郁子さんに、同社の取り組みについてお話を伺いました。
ケーブルテレビ局向け、データ放送システム提案で躍進
株式会社データブロードは、平成20年に富山市で設立。富山県内にとどまらず、全国のケーブルテレビ局向けのデータ放送システムの構築やコンテンツ制作、保守サービスなどを行っています。
代表取締役社長の松原良樹さんと副社長の伊ざ智郁子さんは、元々は、富山市内のシステム開発会社で、地上波やケーブルテレビ局向けのシステム開発に取り組んでいました。
「2000年にはBSが、2003年には地上波のデジタル化が始まり、NECさんとともに大手テレビ局のデジタル化に向けたシステムの構築などに携わっていました。
地上波のデジタル化が終了すると、今度は、ケーブルテレビ局向けのデータ放送の市場に、新規の業者さんがどっと参入されようとしていました。そこで、私たちは地上波や衛星放送で長年培ってきた技術やノウハウをもとに会社から独立し、ケーブルテレビ局向けのデータ放送システム提案を始めたのです」と振り返る松原社長。
同社はデータ放送に必要となるハードウェアは提携先であるNECから提供を受け、そこにデータブロード製のソフトウェアやコンテンツを搭載しています。設立以来、同社が提案するシステムは信頼性が高く、販売先は全国のケーブルテレビ局へと広がっています。
テレビのデータ放送は、万が一にも事故を起してはいけないということから、特に高い技術力が必要とされる分野です。
「当社の設立前は、データ放送はまだあまり見られていない時期でもあり、市場性も無く、経営的にもリスクが高いのではという見方がありました。しかし私自身、長年データ放送の開発に携わってきた中で、大きな可能性を感じていました。
ですから、小さな会社をつくり、低価格で高品質のシステムを組めるとなれば、むしろ、たくさんのお客さまに使っていただけるチャンスだと。データ放送を使った新しいサービスに取り組むテレビ局が増えれば、データ放送が普及して、ひとつの市場をつくることができるのではと考えたのです」
● データ放送の特徴
1 映画館並みの高精細なハイビジョン映像と5・1chのサラウンド音声、字幕表示
2 お好みの番組を探し出したり、録画や視聴を予約できる電子番組表
3 文字や写真でニュース、お天気、番組情報などさまざまな情報を提供できる
同社はこのデータ放送をテレビ、携帯、パソコンの間をつなぐ、ハブ的な情報ツールと位置づけてビジネス展開しています。
高品質なオリジナルシステムで全国に顧客を獲得
データブロードの強みは、高機能・高品質なシステム構築です。それまでの地上波局のキー局や準キー局での経験を活かした、高い品質のシステム提案が特徴となっています。そのデータ放送技術、データ放送のコンテンツ制作、設備工事の3業種を同社が一貫して行うことでコストパフォーマンスが高く、これまでの納入実績は全国に約20社。現在も躍進を続けています。
「当社では、コンテンツもオリジナルのデザインで、原稿の入力システムも含めトータルでご提案が可能です。
オーダーメイドで非常に高品位なシステムなのですが、金額的には他の業者さんとあまり変わらないということでお客さまにとっては非常にインパクトがあり、高い評価をいただくことができました。地上波のデジタル化で実績のあるシステムを使っていますから、信頼性が高いわけですね。
しかも、放送の運用に合ったオリジナルなご提案ができますから、他社製のものに比べて、簡単で使い易いという評価をいただいています」
当初はケーブルテレビ局向けに特化したビジネス展開だったとのことですが、その実績が評価され、地上波局や衛星放送などでも、同社のソフトウェアやコンテンツが採用されています。
ビデオオンデマンドシステムを開発
テレビ局は地上波局で現在約170社。衛星放送で20社。ケーブルテレビ局は約300〜400社と、全部合わせても1000社もなく、一般の企業に比べると小さな市場です。また、システムは一度入れると7年から10年は入れ換えが無いという特性もあります。
そんな中、データブロードでは「ビデオオンデマンドシステム」という新しい技術の開発に成功し、販路拡大に努めています。
「テレビ局の数は少ないのですが、一方で、テレビの台数は、携帯電話の回線を超える約1億4000万台あります。ビデオオンデマンドシステムは、眠っている映像資産をデジタルアーカイブすることによって、これらのテレビで効果的に活用しようというものです。各家庭でその方の好みに合った情報をサービスすることができる、新しい提案です」
ビデオオンデマンドとは
ビデオオンデマンドとは、地デジ対応のインターネットに接続可能なテレビで、見たいときにリモコンで選ぶだけで、お好みのビデオが見られるシステムのことです。
ケーブルテレビ局向けのデータ放送に対応したビデオオンデマンドシステムは、おそらく全国でも初ではないかと話す松原社長と伊ざ副社長。技術的に、国内のほぼすべてのメーカーのテレビに対応することはとても難しいとのことですが、データブロードではそれを見事にクリア。すでに県内では、高岡ケーブルネットワーク向けに制作済みで、データ放送のビデオオンデマンドがスタートしています。
「高岡ケーブルネットワークさまは開局から20年経ちますが、例えば、今年、成人式を迎えられる方が幼稚園に通っていた頃のビデオを、このシステムを使って公開し、契約者に見ていただくことができます。皆さんの過去の記憶や生活のシーンに寄り添って、アーカイブをつくっていくことができますから、地域に密着したケーブルテレビ局ならではの、価値あるサービスだと考えています」
このシステムでは、テレビ以外にも、パソコンやiPad、iPhone、アンドロイドで、過去のコミュニティチャンネル番組を閲覧することが可能となっています。
地元富山とのつながりをもっと
このビデオオンデマンドは、コミュニティチャンネルに限らず、ホテルや病院、学校、自治体、大規模工場でも活かすことができます。地デジ対応のテレビでインターネットに接続していれば利用でき、操作はテレビのリモコンだけで行えます。誰もが使い易く、入院患者向けの情報やアドバイス、職員向けの各種マニュアルなどを分かりやすい映像で示す仕組みに応用できるとあって、期待が膨らみます。
「今後は、全国のテレビ局さんだけではなく、ぜひ、地元富山の企業や、さまざまな皆さんとのお付き合いができれば」と語る、伊ざ副社長。
テレビをインターネットに接続することで、ビデオオンデマンド以外にもさまざまな活用法が広がります。例えば、一人暮らしのお年寄りの安全確認が可能になったり、テレビの画面で商品の注文が可能になったりと、新たな発想でニーズと技術を掛け合わせてどんどん便利になっていきます。そのような中で、同社は富山ならではのサービスを提案していきたいと考えています。
防災とデータ放送
データブロードで手掛けた制作事例の中には、佐賀県と佐賀県内の複数のケーブルテレビ局が連携し、大雨による土砂災害などの発生時に、県が主導して各テレビ局で同じ内容の緊急情報を流すシステムがあります。
複数局で同一の緊急情報を流すシステムはまだ珍しいそうですが、今後は各自治体などで活用する余地が、まだまだありそうです。
そのほか、同社では、かつて地上のアナログ放送に使われていて、現在は空いている、ホワイトスペースと呼ばれる周波数を使った、新しいデジタルラジオの緊急放送の実験にも協力しています。
テレビで暮らしが変わる
全国でもテレビのデータ放送のシステム開発を手掛ける会社は10社に満たないと話すお二人。「テレビを通して暮らしが変わるような、新しい提案をしていきたい」と意気込みを語ってくださいました。
パソコン操作を介さなくても、多彩なサービスをテレビで可能にする、新しいソリューションを目指すデータブロード。富山発の新サービスに期待が高まります。
株式会社データブロード
富山市湊入船町3−30 KNB入船別館2階
TEL:076-471-5316 FAX:076-471-5317
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