会報「商工とやま」平成26年1月号

年頭所感

日本再出発へ、力強い一歩を

  日本商工会議所   会 頭 三村 明夫


  明けましておめでとうございます。日本商工会議所会頭に就任して初めて新年を迎えました。

「日本再出発の礎」を築く

 私は、昨年11月の会頭就任時に「新たな日本再出発の礎を築く」とした所信を表明し、絶えざる進化により、さらなる飛躍に向けて全力を尽くすことを会員の皆様に誓いました。新たな再出発を果たして成長を実現していくため、「わが国の強みと潜在力の再認識とその発揮」、「民間の自助努力」、「成長につながる国際化」の3つの視点を踏まえた上で、「現場主義」と「双方向主義」を基本行動として、商工会議所の運営に取り組んでまいります。


民主導で「成長戦略」実行

 さて、昨年は、アベノミクスによりデフレ脱却の絶好の機会を得ることができ、2020年のオリンピック・パラリンピックの東京開催も決まったことから、将来に希望を持つことができた年でした。今年はデフレ脱却と経済再生の道筋を確実にするための正念場の年となります。デフレマインドから脱却し、自信を持って前向きな行動マインドに転換する、いわば「国のリセット」の年と言えます。

 その成否を握るのは「成長戦略」であり、その実行の主役は民間企業、特にその大宗を占める中小企業です。海外経済の緩やかな持ち直しや円高修正などにより、大企業を中心に業績の回復がみられ、各種経済指標も好転傾向にありますが、中小企業の景況感は、原材料費や人件費の上昇を価格に転嫁できていないなどの理由により、依然としてまだら模様と言わざるを得ない状況です。わが国の成長を確実なものとするためには、日本経済の基盤を支える中小企業全体の底上げを実現する必要があります。

 そのためには、まずはわれわれ自身が、日本経済を支える主体としての気概と自信を持ち、自助努力を重ねることが大事です。多くの中小企業は、独創的なアイデアや創意工夫を持って、限られた経営資源を最大活用し、成長を図っています。知恵を絞りに絞って課題解決を図っている好事例は貴重な財産ですので、商工会議所が中心となって、広く横展開を図ってまいります。一方、消費税率の引き上げによる価格転嫁の問題など、自らの力だけではどうしても解決できない構造的な課題に直面している企業も数多く存在します。こうした課題の解決策については、現場と丹念に対話を重ねることで政策提言にまとめ、政府等に積極的に発信してまいります。特に、4月に予定されている消費税率引き上げに関しては、中小企業の円滑な価格転嫁が進むよう、政府と協力しながら万全の対策を進めてまいります。


「日本再出発」に向けた重点課題への取り組み

 今年で東日本大震災から3年が経ち、被災地では被災企業が事業再開を果たすなど、徐々にではありますが復興への歩みが進んでおります。今年も全国514商工会議所の皆様の力を結集して被災地支援を継続します。1日も早い本格復興に繋げるため全力を挙げていきましょう。

 また、「エネルギー政策」、「T経済連携協定の着実な推進と強い農林水産業の創出Uの同時達成」、「社会保障制度の再構築」など国の将来を左右する重要課題に対しては、127万会員の力を結集して、積極的な政策提言を続けてまいります。

 2020年のオリンピック・パラリンピック開催は、東京だけでなく、各地域においても、自身の成長を実現できるまたとないチャンスです。地域活性化の中核的な担い手である商工会議所が主導して、観光資源や文化、歴史をうまく活用し、独創性にあふれる多くの取り組みを生み出すことで、地域の再生につなげていきましょう。


「地域の発展」「日本の発展」のために

 私たち商工会議所は、「会員企業の発展」、「地域の発展」、「日本の発展」の3つのミッションを持っています。そしてこの3つが同一方向を向いていることが極めて重要です。

 私は、会頭に就任後すぐに、全国9ブロックの主要商工会議所を訪問してまいりました。行政と緊密に連携を図り、中長期のビジョンを明確化している会議所、規制改革を活用し、地域の競争力強化の先頭に立っている会議所、少子化問題や過疎化対策等、難問に正面から向き合い解決を図ろうとしている会議所などなど、まさに地域の発展、日本の発展のため、多大な努力を日々実践している現場を目の当たりにしました。大変力強く感じるとともに、こうした活動をより深化させていかなくてはならないという思いを新たにしました。地域における商工会議所のリーダーシップを発揮し、地域発の成長を強力に進めてまいりましょう。本年が、日本再出発に向けた力強い一歩を踏み出す年となりますよう、皆様の一層のご支援とご協力を心からお願い申しあげます。



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